子どもたちに栄養ある食事と居場所を提供したい
2021.05.21

みんなで一緒に食べ、学ぶ。介護施設が開く「子ども食堂」

Let’s SINC

民間施設と行政が連携し、貧困世帯やひとり親世帯の子どもたちに食事と学習の場を提供する

貧困がもたらす子どもの食事問題

少子高齢化に伴い、子どものいる世帯は徐々に減少していますが、ひとり親世帯の数は1993年から2003年までの間に約1.5倍に増加したのち、ほぼ横ばいとなっています。また、厚生労働省「国民生活基礎調査」(2019年度)によると、母子世帯のうち86.7%が「生活が苦しい」と感じています。
ひとり親世帯の子どもは、貧困や親の多忙が原因で、食事がおろそかになってしまいがちです。具体的には、コンビニ食品が食事の中心になって栄養バランスが偏る、いつも独りで食事をする「孤食」によりコミュニケーションや食育の機会がとれない、といった問題を抱えています。
こうした状況を踏まえ、子どもたちに無料もしくは安価で食事を提供する「子ども食堂」の取り組みが各地で広がっています。鳥取県の「はまかぜこども食堂」は、介護老人保健施設が行政と協力して運営する子ども食堂です。

介護施設と行政の連携で実現した子ども食堂

鳥取県境港市にある介護老人保健施設「はまかぜ」は、退院した人や、リハビリが必要な人に対して、包括的なケアサービスを提供する施設です。主に高齢者や障害者を対象とする「はまかぜ」が子ども食堂の運営を始めたのは2017年10月。きっかけは、「子どもたちが大人とコミュニケーションをとりながら食事ができる場を作りたい」という施設長の思いでした。
開設にあたっては、貧困世帯やひとり親世帯の状況を把握することが必要ですが、施設でそれを行なうのは困難です。そこでまず、県や市に協力を依頼。すると、境港市が子どもの学習支援を行なっていることがわかり、その学習支援事業と協賛する形で子ども食堂を開催できることになったのです。
「はまかぜこども食堂」は、毎月1回、土曜日に、土日が休みとなる「はまかぜ」のデイケアのフロアを利用して開催されます。オープン時の対象児童は、ひとり親世帯・生活困窮世帯の小学3~5年生。「はまかぜ」の職員が食事を用意し、市の職員が学習支援を行なう、というスタイルで開催されました。
献立は、「はまかぜ」の管理栄養士が監修。旬の野菜を使ったメニューや、クリスマスなどの行事に合わせた特別メニューもあります。子どもたちは、ただ食事をするだけでなく、盛り付けや食器の準備、後片付けも行ないます。

初回開催時の看板。ビーフカレー、サラダ、ヨーグルト、フルーツがこの日のメニュー
初回開催時の看板。ビーフカレー、サラダ、ヨーグルト、フルーツがこの日のメニュー

2019年3月に学習支援事業が終了した後も、スイカ割りや手作り流しそうめんなどのレクリエーションを行なっています。参加児童が減少したこともありましたが、市役所や民生委員、社会福祉協議会などと協力して生活困窮地帯にアプローチしたり、地域の児童クラブ利用者を対象に加えたりと、必要な児童に利用してもらえるよう工夫しています。
現在は新型コロナウイルス感染拡大により、しばらく実施がストップしていますが、子どもたちにレトルトカレーを配布するなど、支援を続けています。

食事だけでなくコミュニケーションの場に

参加した子どもたちからは「ご飯がおいしい」「みんなと会うのが楽しい」「(流しそうめん器が)こんなに上手に作れた!」といった感想があり、子ども食堂を楽しんでいる様子が伝わります。また、保護者からも、「子どもが以前より明るく元気になった」と喜びの声が届きました。

子どもたちが職員に混じって盛り付けを手伝う
子どもたちが職員に混じって盛り付けを手伝う

ケアマネジャーの友森千文さんは、「今までお手伝いをしたことがない子もいると思いますが、みんなで一緒に食事を作り片付ける、そんな習慣が身に着く機会になれば良いと思います」と話します。
境港市内には、学習支援事業の対象となる世帯が約80世帯ありますが、「はまかぜこども食堂」の利用登録者は14人とほんの一部。友森さんは「地域に『はまかぜこども食堂』があることを知ってもらい、一人でも多くの子どもたちと楽しくおいしい食事を一緒に食べることができるように、今後もこの取り組みを続けていきたいと思います」と、今後への意気込みを語りました。