病院・大学・民間が連携して終活を身近なものへ!
2026.03.17

誰もが自分らしい最期を。
地域連携によって作られた終活支援アプリ「終活トライ」

千葉 済生会習志野病院
Let’s SINC
身寄りがある人もない人も自分らしく生ききるために、地域で連携して「終活」をサポートする

「終活」が“身寄りなし問題”解決のヒントに

千葉県の東葛南部圏域で急性期医療を担う済生会習志野病院。地域の二次救急医療機関として、年間約5000人の救急搬送患者を受け入れています。その中には一人暮らしで、親族や縁者など身寄りのない患者も少なくありません。

身寄りがない、または身寄りの有無が分からない場合、搬送後に本人が意思表示できない状態に陥ると、医療同意が得られない、治療後の退院調整が円滑に進まない、入院費が支払われないなど、さまざまな問題が生じる恐れがあります。身寄りがいるか分からないまま、同院で看取りを迎えるケースもあり、病院スタッフが対応に困難を抱える場面も見られます。

こうした「身寄りなし問題」を解決に導く方法として、患者やその家族からの相談対応などを担当する、同院福祉相談室長・村田智美さんが着目したのが、元気なうちから人生の最終段階について考え、意思を可視化し誰かに伝える「終活」です。

身寄りのない人が終活を進めておくことによって、もしもの場合でも医療同意や治療後の手続きに関する課題が減少することが考えられます。もちろん、家族がいる場合でも、本人があらかじめ意思を伝えているため、家族や親族が医療処置の判断などに悩むことなく医療方針がスムーズに決定し、精神的負担も軽減されます。

病院と地域の大学・民間事業者が共同でアプリ開発

これまでも習志野病院は、月に1回、地域の商店街で誰でも無料で看護師などに健康・生活に関する相談ができる、「なでしこ相談会」を開催。その中で地域住民からの終活の相談にも対応するなど、病院独自の終活支援を継続的に行なってきました。この活動に加え、さらに多くの人に終活を身近に感じてもらうため2025年5月から始まったのが、スマートフォンやタブレットで使える終活支援アプリ「終活トライ」の開発です。

左から、アプリ開発に関わった千葉工業大学・中村教授、習志野病院・村田さん、「愛の会」・岡江さん

アプリの開発には、千葉県で身寄りなし問題に取り組む終身サポート事業所「愛(めぐみ)の会」のソーシャルワーカー(社会福祉士)・岡江晃児さん、そして高齢者や障害のある人を対象としたアプリケーションなどの研究開発を行なっている、千葉工業大学情報変革科学部・中村直人教授とそのゼミ生が協力。岡江さんの紹介によって、かねてより医療機関との共同研究・開発の可能性を探っていた中村教授と同院がつながり、病院・大学・民間事業者の三者による共同開発が実現しました。

質問に答えるだけ! 「終活トライ」で終活状況を簡単チェック

アプリの制作にあたっては、まず「なでしこ相談会」で使用されていた紙の終活チェックシートをもとに、アプリの構成や質問内容を検討。アプリを利用する人がよりスムーズに回答できるよう、元々チェックシートにあった「入退院の手続きをしてくれる人はいるか」「医療ケアへの希望について話し合っているか」などの質問の内容や順番などが見直されました。その後、中村ゼミに所属する学生を中心にアプリ化が進められ、開発開始から約4カ月で「終活トライ」が出来上がりました。

質問は4択形式。ゲーム感覚で気軽に取り組める

「終活トライ」では、「病院に入院することなった時」「介護が必要になった時」「亡くなった時」「亡くなった後」という4つのステージに分かれており、それぞれに設定されている質問に答えることで、自分の終活状況を点数で知ることができます。結果や自分の回答内容を画像で保存できるのも、このアプリの特徴です。また、病院が回答データを集計できるシステムになっているため、準備ができていないという回答が多い項目を把握して地域住民への呼びかけを積極的に行なうなど、終活支援にデータを役立てることができます。

終活をともに考え、支え合いの輪を地域に広げる

2025年9月25日、習志野病院はなでしこ相談会でこのアプリを実際に活用。参加者は、開発に携わった学生から操作方法を教わりながら、「終活トライ」を使って自身の終活状況を確認しました。そのほか、同院の医療ソーシャルワーカー(MSW)が終活に関する相談にも対応するなど、世代を超えた交流とともに地域住民の終活をサポートする機会となりました。

会話を通して、学生と参加者が終活についてともに向き合い考える様子が見られた

当日参加した地域住民からは、「終活について家族と話し合うきっかけになった」「自分はまだ終活準備が足りないことに気づいた」などの感想が寄せられました。また、参加者のサポートを行なった学生は「終活について気軽に考えるきっかけを作り出せたと感じた」と話し、地域の人々との交流の中で、自分たちで制作したアプリに対する手ごたえを感じていました。

「若い世代とともに終活について考える取り組みは、将来、社会全体で支え合いの輪が広がるきっかけの一つになると期待しています」と習志野病院の村田さん。9月のなでしこ相談会が終了してからも、三者が連携を続けながら、アプリの操作性のさらなる改良や、質問項目の追加などが進められています。

身寄りがあってもなくても、世代や家族の枠を超えて地域で助け合い、一人ひとりが自分らしく最期まで生ききる。そんな社会を実現させるため、習志野病院を中心とした終活支援の取り組みは続きます。

「終活トライ」開発に取り組む中村ゼミの皆さん。今後も、なでしこ相談会を始めとする地域での終活啓発活動にアプリを活用予定

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