あらゆる人が尊重される社会をつくりたい

済生会とSDGs
〜“誰一人取り残さない” 理念と共に歩んだ110年〜

全国 社会福祉法人 恩賜財団 済生会
Let’s SINC
医療と福祉の枠を超え、地域の関係機関と連携をしながらソーシャルインクルージョンが根付く社会を実現させる
2021年12月、済生会は第5回ジャパンSDGsアワードにて「副本部長(内閣官房長官)賞」を受賞しました。社会福祉法人として初の受賞につながったのは、「生活困窮者を済(すく)う」「医療で地域の生(いのち)を守る」「医療・福祉の切れ目ないサービスを提供」という三つの柱のもと、創設以来、地域の中で続けてきたさまざまな取り組みが背景にあります。SDGsの概念にも共通する、“誰一人取り残さない”というソーシャルインクルージョンの理念と共にあった済生会の110年を振り返ります。

済生会の理念とSDGsSDGs

創設110年。済生会の始まりは「施薬救療(せやくきゅうりょう)」の精神

「生活苦で医療を受けることができずに困っている人たちを施薬救療(無償で治療すること)によって救おう」――明治天皇によるお言葉「済生勅語」と、お手元金150万円(現代の金額で約16億円)によって1911(明治44)年、済生会は創設されました。

当時の日本は、欧米列強と並ぶために富国強兵策を進めていましたが、その一方で、戦争で傷ついたり、一家の大黒柱を失ったりして、多くの人々が病気や貧困に苦しんでいました。こうした人々を救うため、明治天皇は医療を中心とした支援を行なう団体を作ることを提唱しました。

創設後、済生会は各地に診療所を設け、貧困所帯に無料の診療券を配布。巡回診療班を編成してスラム街を回り、診療や保健指導を行ないました。その精神は今でも済生会独自の生活困窮者への支援事業「なでしこプラン」 として受け継がれています。

なでしこプランの支援を受けた人は事業化された2010年からの過去11年間だけでも累計約156万人。今日も全国で約6万4千人の職員が、「施薬救療」の精神を胸に医療・保健・福祉の分野で活動しています。

①日清・日露戦争で対外債務が膨れ上がり、多くの国民が貧困にあえいでいた時代に明治天皇(写真)の声で済生会は創設しました。現在は、秋篠宮皇嗣殿下が総裁を務められています。
②貧しい地域をめぐる巡回診療班の姿は、日本画家・堅山南風(かたやまなんぷう)と荒井廣成(あらいひろなり)の合作による日本画にも描かれています。
③明治天皇が時の内閣総理大臣である桂太郎を呼び発した「済生勅語」を書面に起こした勅語書。

ソーシャルインクルージョンとSDGsの共通点とは?

1990年代以降、家族や地域のつながりの弱体化、所得格差の拡大、さらには高度情報化社会の中で、人と人、人と社会の関係が希薄になっています。
そこで済生会が掲げているのが、このウェブサイトのテーマにもなっている「ソーシャルインクルージョン」の実現。社会的に弱い立場にある人を含めたあらゆる人が地域社会に参加し、共に生きていく社会をつくることです。

この考え方は、”誰一人取り残さない”ことを掲げるSDGsと同じ。ソーシャルインクルージョンの実現は、SDGsの目標達成に直結しているのです。

全国済生会施設の「1696の決意」

2020年、済生会の各病院や福祉施設などが取り組むことを宣言した1696の事業を「済生会ソーシャルインクルージョン推進計画」として取りまとめました。家に閉じこもる高齢者や健康無関心層、買い物難民、就労をはじめとしたがん患者への支援など、これまでの医療・福祉の枠を超えて、差別や分断がないソーシャルインクルージョンが根付く社会を目指すものです。
日常の業務を通して、まだ一般には広く知られていないソーシャルインクルージョンの推進に取り組んでいます。

高岡病院(富山県)
イオンモールウォーキング
高岡病院と隣接するイオンモール、高岡市の三者で協力し、健康チェックやウォーキング指導を実施
北海道済生会
北海道済生会フードバンク
市民のための健康福祉ゾーン「済生会ビレッジ」でフードバンク事業を開始
岡山県済生会・広島県済生会
愛媛県済生会・香川県済生会
済生丸
瀬戸内海近隣の7病院が協働して運行する日本唯一の巡回診療船
医療型障害児入所施設なでしこ(三重県)
通園の療養介護事業
県内唯一の重症心身障害児施設として通園の療養介護事業を展開
松山ワークステーションなでしこ(愛媛県)
院内ベーカリーカフェ
障がい者と職員がパンや菓子を製造・販売する院内ベーカリーカフェ
SPECIAL
column
済生会が取り組んできたことは、
すべてSDGsの理念につながっている。
済生会理事長 炭谷 茂

済生会は、創設以来生活困窮者の支援を全国的に実施している最大規模の民間非営利団体です。支援に際しては法律や制度の枠を超えて生活困窮者のニーズに応える精神は、創設時より変わりません。
近年、人のつながりが弱体化し、孤独死や引きこもりをはじめ、多くの問題が発生していますので、済生会は、日本では初めて「済生会ソーシャルインクルージョン推進計画」を策定し、地域での人のつながりの強化に乗り出しました。
SDGsの最も重要な目的は、貧困の撲滅にあります。また、スローガンの「誰一人取り残さない」は、ソーシャルインクルージョンの具体化で実現されます。済生会の活動は、SDGsの目標と完全に一致しますので、SDGsの目標の実質的、具体的な達成に向けて貢献していきます。

“誰一人取り残さない”まちづくりを!SDGs

済生会は、保健、医療、介護、福祉事業を通した事業で地域と密接につながっています。そのうえで行政・企業・住民等と協力しながら、どんな人も自分に合った生活ができる地域をつくっていく、誰一人取り残さない「まちづくり」にも積極的に取り組んでいきます。

例えば、多世代が健康で快適に暮らせることを目指した「ウエルネスタウン」の構築を進める北海道済生会では、行政・地元企業などと力を合わせ、誰もが立ち寄りやすいショッピングモールの中に健康福祉ゾーン「済生会ビレッジ」を開設。

そのほか全国でも、高齢者の孤立を防ぐための見守りや買い物支援、障害者やがん患者への就労支援、地域の交流イベントの開催など、まちに根差した取り組みを行なっています。

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SDGsって何だろう?SDGs

SDGs は、Sustainable Development Goalsの略称。2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標として、2015年の国連サミットで採択されました。17のゴールと169のターゲットから構成される目標のすべてで、地球上の“誰一人取り残さない”ことを誓っています。

ジャパンSDGsアワードはオールジャパンでの取り組みを推進するために、2017年に創設された賞。達成に向けて優れた取り組みを行なっている企業・団体等を表彰しています。

NEWS!
第5回ジャパンSDGsアワード
「副本部長(内閣官房長官)賞」受賞

2021年12月24日、済生会は岸田内閣総理大臣を本部長とするSDGs推進本部より、第5回ジャパンSDGsアワード「副本部長(内閣官房長官)賞」を受賞しました。特に顕著な功績があったと認められる企業等が選定されるもので、社会福祉法人としては初の受賞。「生活困窮者を済(すく)う」、「医療で地域の生(いのち)を守る」、「医療、福祉の切れ目ないサービスを提供」の事業の三本柱にソーシャルインクルージョンの理念を加え、これからもリーダーシップを取って事業を展開していきます。

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