地域社会から孤立してしまう人をなくしたい
2021.05.28

高齢者を孤立させない!「誰もが参加できる」カフェとは

Let’s SINC

誰もが気軽に立ち寄れる居場所を地域の中につくり、住民の社会からの孤立を防ぐ

一人暮らしの高齢者が増加中。孤立のおそれも

世界的に見ても急激な高齢化が進む日本。近年は特に、一人暮らしの高齢者が増加しています。
内閣府の「高齢社会白書(令和2年版)」によると、65歳以上の人口に占める一人暮らしの割合は、1980年が男性4.3%(約19万人)、女性11.2%(約69万人)だったのに対し、35年後の2015年には、男性13.3%(約192万人)、女性21.1%(約400万人)と激増。男性高齢者の約10人に1人、女性高齢者の約5人に1人が一人暮らしをしている計算になります。

高齢になると、退職して外に出る目的が失われることや、体力の低下などが原因で、家の中に引きこもってしまう可能性が高まります。引きこもることで、人との関係が薄れ孤独になるおそれがあるばかりでなく、認知症の進行や孤独死のリスクもあります。
高齢者を孤立させないために、地域でできることは何でしょうか。

誰でも「気軽・手軽・自由」に参加できるカフェをつくる

静岡市駿河区の特別養護老人ホーム「小鹿苑」。小鹿苑がある地域でも、一人暮らしや身寄りのない高齢者が多く、「地域とのつながりが希薄になっている人が多いのでは」という課題が指摘されていました。
そこで小鹿苑では、「地域の居場所づくり」ができないかと模索。小鹿苑近くの公民館で開かれている地域支え合い型通所サービス(住民に趣味や交流のために通う場を提供するサービス)を訪ね、地域住民に聞き取りを実施しました。すると「近くに参加できるサロンや老人会などがない」「年齢や世代を気にすることなく誰もが自由に参加できる場所がない」といった意見が挙がりました。
これらの意見や、近隣サロンの見学を通じて得た知見、元民生委員のアドバイザーからの助言などを参考に、居場所のコンセプトやスタイルを決定。2017年9月、地域に住む誰もが参加できる、「気軽・手軽・自由」をコンセプトにした「小鹿苑カフェ」をオープンしました。

カフェの様子。お菓子や飲み物と一緒にゆっくりおしゃべりを楽しむ
カフェの様子。お菓子や飲み物と一緒にゆっくりおしゃべりを楽しむ

口コミが広がり多数の人が参加

カフェは、毎月第1金曜日の9:30~11:30に実施され、時間内は自由に出入りが可能。参加費は無料で、子どもから高齢者まで誰でも参加できます。
カフェでの過ごし方も、小鹿苑がお菓子などを用意する以外は自由。イベントもよく開催され、クリスマス・バレンタイン・七夕など季節の行事に合わせた企画や、カラオケ、小鹿苑の職員による体操などを実施しています。小鹿苑の専門職による、感染症予防やフレイル(身体的機能や認知機能が弱ってくること)予防の講演会も、不定期で開催しています。

※新型コロナウイルス感染予防のため、2020年3月からカフェの実施を休止しています

小鹿豊田地域包括支援センターの看護師によるフレイル予防の講演会の様子
小鹿豊田地域包括支援センターの看護師によるフレイル予防の講演会の様子

参加者の評判も上々。「自由に過ごせるところがいい」「専門職による講演会がよかった」「歩いて行ける距離でうれしい」とポジティブな声が多数挙がり、開催回数も27回を数えるまでになりました。1回あたり平均23~25人ほどの参加者が、カフェで思い思いの時間を過ごしています。

クリスマスはみんなで折り紙の飾りを手作りした
クリスマスはみんなで折り紙の飾りを手作りした

参加者の数は、回を重ねるごとに増えているといいます。「参加者同士で顔の見える関係づくりができ、地域で声を掛け合うことによる口コミ効果があって、毎回これだけの数の方が参加してくれているのでは」と語るのは、小鹿苑で在宅ケアマネジャーを務める狩野陽さん。「世代や年齢に制限を設けているわけではないのですが、男性の方や若年層の方の参加が少ないのが今後の課題。こうした方々にも気軽に参加できるような環境づくりを検討しています」

社会復帰のきっかけにも

参加者とのコミュニケーションや、カフェの準備・後片付けを行なうボランティアの存在も、カフェには欠かせません。毎回平均4~5人ほどのボランティアが参加し、こちらも人数は増加傾向です。「なかには、それまで外に出ることをためらっていたけれど、小鹿苑カフェのボランティアを経て仕事を再スタートしたという方もおられます。私たちも全く想定していなかった、うれしい効果でしたね」(狩野さん)。
オープンから約4年が経ち、高齢者はもちろん、世代や性別を超えて多くの人の「居場所」となっている「小鹿苑カフェ」。狩野さんは「地域の人たちが来るのを待っているだけでなく、こちらから地域に出向く機会を増やし、みなさんと一体になって居場所づくりを続けたい」と語ります。
住民、特に高齢者の孤立を防ぐことは、どの地域でも求められる課題です。小鹿苑カフェのように、「すべての人に開かれた居場所」は、今後もっと増えていくべきなのかもしれません。