「ひとりじゃないよ」女性の悩みに向き合う“つなサポ相談室”
不安や心配は「誰に相談したらいいの……?」
「生理用品代、鎮痛剤代の出費が毎月家計を圧迫している」「出産後、仕事に復帰できるか不安」といった、家事や育児、仕事などの女性特有の悩みは年齢を問わず多岐にわたります。特にコロナ禍以降、経済的な理由で生理用品を購入できない「生理の貧困」という問題が顕在化。厚生労働省の調査によると生理用品が買えないことで身体的・精神的な健康状態にも影響を及ぼす可能性があることが分かっています※。
そんな女性が抱える不安や悩みに応えるべく、栃木県宇都宮市に世代を問わず女性全般を支援するための「つなサポ相談室」が2021年9月に開設されました。
※参照:厚生労働省:「『生理の貧困』が女性の心身の健康等に及ぼす影響に関する調査」より
「きっかけは『コロナ禍において不安や困りごとを抱える女性が孤立・潜在化していて、行政だけでは支援が届きにくくなっている』という宇都宮市からの声でした。そこで、女性が社会との絆・つながりを回復するために、宇都宮市つながりサポート女性支援事業の一環として開設しました」とつなサポ相談室の立ち上げメンバーの一人である地域連携課の稲見
「つなサポ相談室」は女性の生活上の困りごとに対応する相談窓口です。電話相談や出張相談会といった相談対応だけではなく、生理用品の配布なども行なっています。つなサポ相談室には済生会宇都宮病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)と事務職員が参加。市の保健所や社会福祉協議会、地域のNPO団体などと連携し、解決に向けたサポートに取り組んでいます。
まずは「つなサポ相談室」の存在を市民に知ってもらおうと、ハローワークや道の駅、市民センターや特養とちの木荘の地域交流室などさまざまな場所に出向き、出張相談会を開催。「生理の貧困」にも対応すべく、出張相談会では生理用品の無料配布も行ない、配布をきっかけに抱えている悩みや困りごとについて話せる機会をつくりました。
「出張相談会には『コロナ禍で子育てや夫婦関係などにストレスを感じてしまう』『コロナの影響で職を失ってしまった』『母子家庭で将来のこと、子育てのことが不安。誰に相談したらよいのか分からない』といったコロナ禍によるさまざまな悩みが寄せられました」
「生理の貧困」をはじめとした女性の悩みを“地域の輪”でサポート
出張相談会にて寄せられた女性の悩みを聞き、より多くの人を支援するためにソーシャルアクションの必要性を感じたという稲見さん。
生理用品が無料で受け取れる・気軽に相談できる場所を地域に増やすために、地域のNPO団体などに自ら足を運んで協力を依頼していきました。その結果、相談窓口兼生理用品を受け取れる場所として、市内に44カ所の窓口を設置することができました。
栃木県社会福祉法人の「いちごハートねっと事業」も、つなサポ相談室との連携を申し出てくれた団体の一つです。
いちごハートねっと事業は、栃木県社会福祉法人が取り組む事業で、福祉の総合的な相談窓口「おこまり福祉相談」や、保育所や児童福祉施設、障害者支援施設、救護施設など各社会福祉施設が、特性を活かして各種支援制度につなげる「あんしん支援事業」を実施しています。
「いちごハートねっと事業に加盟する児童福祉施設や障害者支援施設、老人福祉施設などの団体が積極的に参加してくれたこともあり、宇都宮市内には相談窓口のほか、協力機関として登録されている団体を含め56カ所の団体とのネットワーク構築ができました。連携機関が増えたことで、より適切なサポートができるようなりました」
一人で悩みを抱え込まないために
悩みを抱える地域住民に「気軽に相談できる場所」として周知してもらえるよう広報活動にも力を入れています。公共施設等でのポスター掲示やチラシ、カードの設置や、つなサポ公式HPやTwitterといった SNS情報サイトでの情報発信、地元の新聞や情報誌に事業の概要やイベント情報などを掲載しています。
その結果、徐々に「つなサポ相談室」の認知度が高まり、12月には地元TV局のニュース番組で特集が組まれました。
つなサポ相談室での対応のほか、周知活動に積極的に取り組み、地域の連携機関を増やすために奔走する稲見さん。悩みを抱える女性へ向けて「頑張ったね」「ひとりじゃないよ」と伝えたいと話します。
「つなサポがあなたの悩みに寄り添います。だから我慢せず、抱え込まず、まずは話をしてみてと伝え続けていきたいです」
女性特有の悩みは、近しい人でも相談しにくいことがあります。
「つなサポ相談室」のように、抱え込んだ問題が複雑化する前に的確な支援につなげるためには、悩みを話すきっかけづくりや気軽に相談できる存在が地域の中に必要なのではないのでしょうか。