ソーシャルインクルージョンなアレコレ
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まちのあちこちにある
ソーシャルインクルージョンな
場所・モノ・コトをピックアップ

スターバックス コーヒー
nonowa国立店

2021.9.17
「ありがとう」の手話をしているスターバックス コーヒー nonowa国立店の2人の店員

※写真撮影時のみマスクを外しています

スターバックス コーヒー
nonowa国立店

※写真撮影時のみマスクを外しています

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手話はできなくてOK!

新しいコミュニケーションを創る
国内初のサイニングストアって?

2021.9.17

JR国立駅の改札前にある「スターバックス コーヒー nonowa国立店」の看板には、何だか見慣れない指文字が並んでいます。実はここ、2020年6月にスターバックスが日本で初めてオープンした“サイニングストア”。サイニングとは「手話」のことで、聴覚に障がいあるパートナー(店舗スタッフ)と聴者が共に働くお店です。カフェという形でみんなの暮らしに溶け込むソーシャルインクルージョンな場所で、コーヒーを飲みながらお話を聞いてきました。

スターバックス コーヒー nonowa国立店の店頭

スターバックス日本初出店のサイニングストアをオープンする場所として選定されたのは、ソーシャルインクルージョンをまちづくりの理念に掲げる国立市。数ある候補地の中から選んだとのこと。

今、目の前にいる人
通じ合う方法を考えてみる。

スターバックス コーヒー nonowa国立店に在籍している24人のうち聴覚に障がいがあるパートナーは現在18人。
聴覚に障がいがあるといっても、片耳は聴こえたり、難聴だったり、発声ができたりできなかったりと、程度はさまざまです。
店内を覗いてみるとメニューも雰囲気も、いつものスターバックス。オーダーを決めて早速レジへ進みます。接客をしてくれたのは、数カ月前にストアマネージャー(店長)になった高津萌子さん。片耳に難聴がありますが、国立店で働き始める前は手話も使っていなかったそう。

高津萌子さん

高津萌子さん

耳が聴こえない人が接客すると知って、手話ができなくちゃいけないのでは……? とドキドキしながらいらっしゃる人も多いのですが、サイニングストアだからといって手話で接客すると決めているわけではないんです。個々のパートナーができる方法と目の前にいるお客様に伝わる方法を組み合わせて、一緒に新しいコミュニケーションをつくるイメージです。
手話でオーダーをとっている写真

教えてもらったのは「スターバックスラテ」と「アーモンドミルクカスタム」の手話。特にラテの手話は指をL字にするだけなので、真似をしてすぐに覚えられました。次からは手話で注文できそう!

スターバックスで今日から使える手話 スターバックスで今日から使える手話

オーダー方法は「指差しメニュー」をはじめ、タイマーの音やヘルプを呼ぶ声の代わりに、手首で振動するデジタルウォッチ、「ブギーボード」と呼ばれる筆談器も活用。今では国内のスターバックス1600店舗すべてに導入できるようになっています。
さまざまなオーダー方法を導入することでうれしい誤算もあったのだとか。

高津萌子さん

高津萌子さん

簡単な手話を覚えてきてくださったり、常連さんはスマートフォンにオーダーをメモして見せてくださるようになったり。自分らしいオーダーの方法を編み出していただいています
指差しメニューを使い、飲み物のサイズを伝えている写真

これが指差しメニュー。イートイン・テイクアウト、サイズなど、シンプルな選択肢だけでオーダーができるので高齢のお客さんにもとても好評のようです。

どんな人にも開かれた
「カフェ」だからできること。

ドリンクを待ちながら店内を見回すと、ほかのスターバックスよりも何だか空間が開放的に感じられます。

高津萌子さん

高津萌子さん

それはレジ上のメニューボードがないからなんです。聴覚に障がいのあるパートナーは店内を見渡して何が起こっているか把握する必要があり、視認性を重視した設計になっています。
スターバックス コーヒー nonowa国立店の広々とした店内

店内は車椅子でも楽に出入りできるように考え抜かれた優しいレイアウト。テーブルは、向かい合って手話をするとき、手の動きを邪魔しないように角を丸くしているそう。

そうこうしているうちに、ドリンクが完成。
レシートに記載された3桁の番号がブギーボードやデジタルサイネージに掲示されます。カップにも番号の入ったシールが貼ってあり、照らし合わせて確認できるようになっています。

素敵な笑顔で接客する店員

提供する際のアイコンタクトと明るい笑顔にホッと癒やされます。ブギーボードは、スムーズなオペレーションはもちろんのこと、パートナーが自信を持って提供できるように考案されたシステムなんだそう!

高津さんが目指すのは、サイニングストアを通して「ダイバーシティとは何か」を伝えていくこと。カフェという形態に大きな価値を感じているといいます。

高津萌子さん

高津萌子さん

カフェは誰にでも開かれた場所。だからこそ今まで考えたこともなかった人にきっかけを届けられると思っています。
店内の壁に飾られているアート

壁にあるアートは、ご両親が聴覚に障がいがあり、音声言語や手話では伝えきれない思いを表現しようと活動している門秀彦かどひでひこさんの「Talkative hands(おしゃべりな手)」。コーヒー と抹茶の手話が実はそっくり、なんて発見も楽しい!

ここは「特別」な場所ではない!
障がいを自分らしさと捉えて働く。

2021年に25周年を迎えたスターバックス コーヒー ジャパンは、創業当初からインクルージョン&ダイバーシティを掲げています。
nonowa国立店がオープンして、今年6月で1年が経ちましたが、いい意味で「ほかの店舗と変わらない」ということが分かったそう。

高津萌子さん

高津萌子さん

サイニングストアの2号店をつくるのではなく、逆にこの“特別じゃない感”をほかの1600店舗に広めることを目指しています。障がいの有無にかかわらず、自分らしさ、強みを生かして働いていけるようにもっとインクルーシブな環境を提供していかなくてはと考えています!
手話やアイコンタクトで意思疎通している店員たち

仕事中のパートナー同士の手話の速さにびっくり……! 表情から、普段からパートナー同士が良い関係を築いていることが分かります。

飲み物を作っている店員

開放的な店内では聴覚に障がいのあるパートナーたちがいきいきと働く姿が360度から見え、そんな光景がカフェの雰囲気そのものを明るく和やかにしています。

日々お客さんとやりとりする中で、高津さんには特に忘れられない出来事があると話します。
あるとき、お母さんと一緒に聴覚に障がいのある女の子がお店にやってきました。その女の子はクラスメイトとうまくコミュニケーションがとれず悩んでいたのだそう。
そんなとき、パートナーたちがブギーボードを使ってレジで会話する様子を見て、女の子は自分にもできるかも……と思い、クラスで補聴器について話すことができたのだといいます。

高津萌子さん

高津萌子さん

私たちの働く姿が女の子の生活に勇気を与えたと知って、すごくうれしかったです。 第一言語が声を出す会話とは限りません。みなさんもコミュニケーションを楽しむ気持ちだけ持って、まずは気軽に来ていただきたいです。

お店へ行ってみると、誰もが居心地のいいカフェとして、自然に時間を過ごしている自分に気がつきます。まちに溶け込むサイニングストアのパートナーたちに、ぜひ会いに行ってみてください。あらためて、コミュニケーションの楽しさに気付くことができるはずです。

column

まちの人に聞いてみました

国立市役所 政策経営部 吉田徳史さん

「インクルージョン&ダイバーシティ」という同じ志を掲げるスターバックスさんが日本初のサイニングストアをオープンする場所として国立を選んでいただいたことをとても光栄に感じました。実際に利用してみると「コーヒーを飲む」という日常の中で、気軽に手話に触れられて、さらにパートナーの方と直接コミュニケーションできるというのがとてもいいですよね」

国立市役所 政策経営部 吉田徳史さん

「3年前から国立に住んでいて、こちらのサイニングストアができたときもすぐに行きました。いつもはメニュー表だけを見てサッとオーダーすることが多いのですが、ここではお互いの“違い”を理解しながら、店と客という垣根を超えて、注文という「共同作業」をするイメージ。指差しも手話も交えながら、しっかりお互いの目を見てオーダー。何だかあったかい気持ちになれます」

国立市在住 30代女性

今回訪ねたソーシャルインクルージョンな場所

スターバックス コーヒー nonowa国立店
住所 :東京都 国立市 北1-14-1 nonowa国立
営業時間:7:00~22:00 ※変更の可能性あり
定休日:不定休
ホームページ:https://store.starbucks.co.jp/detail-1872/

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