視覚障害者の移動支援システム「ナビレンス」って何?
2023.11.22

“ソーシャルインクルージョン”を具現化する最先端ツール「ナビレンス」

Let’s SINC
DXを通して視覚に障害を持つ人もそうでない人も、誰もが安心して通院できる環境づくりを行なう

視覚障害者の歩行支援システム「ナビレンス」

みなさんは、周囲の情報を音声で読み上げ、視覚障害者の移動をサポートする移動支援システム「ナビレンス(NaviLens)」をご存じですか。

ナビレンスは2017年にスペインの企業と大学が開発した無料アプリです。「タグ」と呼ばれるカラフルな二次元コードをアプリ内のカメラでスキャンすると、その場所の説明や、距離・方向などの案内を画面に表示。さらに情報を音声で読み上げ、視覚障害者や高齢者など、看板や文字が見えづらい時、目的地までの道が複雑な時などに案内を行ないます。現在、海外では徐々に普及が進んでおり、バスや電車などの公共交通機関の乗り場案内や時刻案内、美術館や博物館などにも活用されています。

そんなナビレンスを国内の総合病院で初めて導入したのが、東京都済生会中央病院。 担当者の事務次長代理の町田洋治さんに、導入のきっかけやアプリの使用状況、システムを入れるまでの経緯についてお話を伺ってみました。

港区三田にある東京都済生会中央病院。2022年には病院内店舗初のユニクロをオープンした
「ナビレンス」のタグ。皆さんはまちで見かけたことがありますか?

道情報をスマホで瞬時にキャッチ!

もともと、視覚障害をもつ方が病院内でどのような不安を抱えているのか、どうしたら支援できるのかを考えていたという町田さん。しかし、日本国内ではナビレンスの導入事例がほとんどなく、さらに病院という場所でどのように取り入れられるのか、イメージするのが難しい状況だったと話します。そんな時、文京区の文京シビックセンターでナビレンスの実証実験を行なっていることを知り、実際に行って体験してみようと企画課のメンバー2人とともに足を運びました。

お話を伺った中央病院事務次長代理の町田洋治さん(写真左から2番目)

「最寄りの地下鉄の改札を出て、センターへ向かうエスカレーターの前にナビレンスの最初のタグを見つけ、実際にスマホのカメラでかざしてみました。すると、200メートル以上も離れているのに、サッとコードを認識。読み取った瞬間とてもワクワクして、一緒に行った企画課のメンバーとこれは面白いね!と盛り上がりました」(町田さん)

ナビレンスのタグは、QRコードのように至近距離で静止して読ませる必要がなく、遠くからでもスマホをかざすだけで簡単に読み取ることができます。町田さんがその時に読み取ったセンター内の区役所へ誘導する情報もとてもわかりやすいものでした。
これならば、視覚障害をもつ方や患者さんに、あらかじめ病院でナビレンスを導入したことを伝えておけば、来院時すぐに便利に使ってもらえるのではないか――使用感を確かめ、病院で使われるイメージが少しずつ見えてきたことで、町田さんはナビレンスの日本代理店(株式会社メジャメンツ)に連絡。タグの種類や掲示場所の検討など、契約に向けた準備を進めていきました。

病院で「ナビレンス」をどう活用する?

まずは、視覚障害者の方が一番利用する病院の正面玄関から2階の眼科受付までのルートを安心・安全に案内することを第一の目的に、タグの配置を検討。また、視覚障害をもつ人が外出先で一番不安を感じやすいというトイレにもそれぞれタグを設置しました。そのほか、誰もが利用するエレベーターなどの案内も加え、病院の規模も考慮して30種類のタグを作成しました。

アプリの読み取り感度が高く
遠くからでも情報をキャッチ

目の見えない人が外出時に一番不安を抱える
トイレも案内

2023年4月から同院でナビレンスの運用を開始し、現在で7カ月あまりが経過。実際に使用した人からは、「とても便利」「もっと国内で広がってほしい」「ユニクロやセブンイレブンなど、病院内でのお店でも使えるといい」などのうれしい反応が続々と寄せられています。

「とはいえ、読み取り回数の履歴をみるとまだまだ少ない状態。今後どうやって“広報”をしていくかが課題です。視覚障害者の方に限らず、病院を利用するすべての人を対象に病院の情報を発信するなど、院内掲示のツールとして定着させていきたい」と町田さん。 院内ポスターの掲示やSNSでの発信のほか、 ナビレンスの障害者専用サイトで同院のどこにタグがあるのか、設置場所の紹介も行なっています。

ナビレンスで「ソーシャルインクルージョン」を浸透させたい

ナビレンスの特徴はなんといっても”汎用性の高さ”。タグごとに設定する文字情報は、管理側でいつでも自由に変えることができます。例えば「今日は休診」など、日によって変わる情報にも対応が可能です。使用端末の設定言語に合わせて自動で翻訳したり、画面に手話や動画を流したりすることもできます。

こうした機能を活用することで、障害の有無や種類、国籍や年齢なども関係なく、「誰も」が便利に使えるツールとしての可能性が広がると町田さん。今後、導入する施設が増えていき、国内でナビレンスの存在がもっと知られるようになれば、設置も利用もより気軽になると予測しています。

「ナビレンスは“すべての人”が対象です。全国の済生会の病院・施設でナビレンスの導入が広がっていけば、ソーシャルインクルージョンの一つのムーブメントにもなるのではないでしょうか。公共性の高いトイレなどのタグは『パブリックタグ』として無料で提供されているので、まずはそこから始めてみるのもよいと思います」(町田さん)

皆さんもまちでカラフルなタグを見つけたら、ぜひアプリをダウンロードして「ナビレンス」を体感してみてはいかがでしょうか。

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