パートナーはコンビニ! 認知症の高齢者に目配りする仕組み
「シニア世代の店」になりつつあるコンビニ
私たちの暮らしに密着するコンビニエンスストア。24時間営業で深夜の生活を支えてきたことから「若者の店」というイメージをもつ人も多いでしょう。しかし、近年になって来客層に大きな変化が起こっています。
コンビニチェーン大手のセブンイレブンによると、50歳以上の客の割合は、1989年にはわずか9%だったのに対し、30年後の2019年に行なった調査では37%まで上昇。これは、日本の人口の高齢化を上回るペースです。
また、コンビニが高齢者を保護するケースも増えています。大手コンビニチェーンなどが加盟する一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会が2019年に行なったアンケートでは、全国54,285店のコンビニのうち、高齢者の保護を行なった店舗は全体の19.8%。保護の理由として挙げられたものの中で、「徘徊」が49.3%と約半数。29.7%が「徘徊以外の問題行動」によるものでした。
こうした役割をもつコンビニを、高齢者の見守りに役立てている地域の取り組みを紹介します。
コンビニとの連携強化で高齢者を見守る
蔵王連峰の美しい景色を望む山形市。市の東部にある済生会愛らんど地域包括支援センターでは、2018年4月からコンビニと連携して高齢者の見守りネットワークづくりに取り組んでいます。きっかけは、地域のスーパーが撤退し、高齢者がコンビニを利用する機会が増えたこと。同センターでは、高齢者の身近な存在になったコンビニを活用し、高齢者の見守りに役立てないかと考えました。
仕組みづくりにあたり、同センターの利用者とコンビニ9店舗を対象にしたアンケートでは、コンビニで買い物をする理由として「行くのが楽」「顔見知りだから」との回答を得る一方で、コンビニ側も高齢者は固定客につながる手応えを感じているということがわかりました。
また、アンケートを通じて見えてきた課題の一つが、同センターの認知度の低さです。そこで、スタッフが地域のコンビニを訪問。センターの活動紹介や地域サロンの情報、虐待予防のチェックリストなどを掲載する広報誌「愛らんどだより」(年4回配布)を手渡すなどして、認知度の向上に努めました。
コンビニスタッフとの情報交換も積極的に行ない、認知症の高齢者などへの対応方法を伝えるとともに、高齢者のお客さんへの対応に関する聞き取りを実施。すると、「毎日のように来店し商品を探せずに困っている人」「家がわからない人」「一日に何回も同じものを買う人」などへの対応に困っているという実情が明らかになりました。
「認知症対応の手引き」を配布してコンビニスタッフをサポート
聞き取りで浮かび上がった課題に対し、同センターでは、市役所・認知症地域支援推進員※と共同作成した「認知症かもしれない方への対応お役立ちガイド<お店版>」を、地域のコンビニ全店舗に配布。「支払いがうまくできない」「一日に何回も来店する」などの具体的なケースを記載するとともに、「認知症でお金がうまく支払えない方には大きめの声でゆっくり話しかける」「気になる方がいたら警察(緊急の場合)、市役所、地域包括支援センターなどの相談機関に連絡する」など、即実践可能な対応策を紹介。認知症を正しく理解するために活用してもらっています。
※認知症地域支援推進員…市町村本庁や地域包括支援センター、医療機関などに設置されている、認知症の人やその家族の支援を行なう者のこと
高齢者の中には、問題を抱えたまま過ごしている人も少なくありません。身近なコンビニなどでそれに気づくことができれば、適切な支援を届ける糸口につながります。同センターでは、「高齢者が住み慣れた地域で安心・安全に生活できるように、連携先をさらに増やし、地域に見守りの目を広める取り組みを続ける」とのこと。こうした仕組みが確立されれば、高齢者時代の新たなモデルケースとして広がるのではないでしょうか。