園児たちを地域の中でのびのびと育てたい
2021.06.04

保育園の「騒音」問題。未然に防ぐカギは「地域交流」にあり

Let’s SINC

地域住民と活発に交流して保育園に親しみを持ってもらい、地域みんなで子育てするという意識を共有する

地域住民からの苦情に悩む保育園

少子化が進む日本。さまざまな理由が挙げられていますが、その一つが「保育園の整備不足」。子どもを安心して預けられる保育園の増設が求められています。
しかし近年は、近隣住民から「子どもの声がうるさい」などの苦情が寄せられ、対応に苦慮している施設もあります。中には、住民との溝が埋まらず保育園の新規開設が延期や断念に追い込まれたというケースも報道されています。

騒音の感じ方は、人それぞれ違います。ある人にとっては子どもたちの声が微笑ましいものだとしても、別の人にとっては耐えがたい苦痛と感じているかもしれません。とはいえ、保育園で子どもの声や音をゼロにするのはとても難しいことです。
施設の中には、高い防音壁を設けるなどの対策を行なっているところもありますが、全く別のアプローチを試みている施設もあります。新潟県にある「なでしこ青空保育園」の取り組みを見てみましょう。

「みんなで子育てをする」意識を、地域住民と共有

新潟県のほぼ中央に位置する三条市。閑静な住宅街の中に建つ「なでしこ青空保育園」は、2010年の開園以来、騒音による近隣住民からの苦情が1件も寄せられたことがないそうです。

なでしこ青空保育園の外観
なでしこ青空保育園の外観

どうしても大きな音が出てしまう行事の前には、地域住民に文書で知らせたり窓を閉めたりするなどの防音対策を行っている同園。主任保育士の坂口友恵さんは「当園のことをより多くの地域住民の方々に知ってもらい垣根を取り払うことにも重点を置いています」と語ります。

主任保育士の坂口友恵さん
主任保育士の坂口友恵さん

「地域の方々との交流の場を設け、『みんなで子育てを行なっている』という意識を共有できるようにしています。例えば、園の行事にボランティアとして参加していただいたり、園児が自治会の行事に参加したり。地域住民の方がより園に対して親近感を抱けるように、1度や2度で終わるのではなく、年間を通じて計画を立て、互いに交流しています」(坂口さん)

ホームページでは同園の保育方針を伝えるとともに、行事の様子も紹介。これまでに行なったのは、「郷土料理の笹団子づくり」や「餅つき会」「ひな祭り会」といった園の行事のほか、地域の自治会が主催する「笑顔いきいきクラブ」など。「笑顔いきいきクラブ」では、遊戯や歌の発表で子どもたちたちの成長した姿を見せたり、地域の人々へ感謝の気持ちを伝えたりして、交流を深めています。こういった活動の情報を積極的に発信することも、地域住民にとっての安心感につながるようです

※新型コロナウイルス感染予防のため、現在は外部の方との交流を制限しています。ホームページでの情報発信や日頃のあいさつは変わらず行なっています。

地域のボランティアと一緒に笹団子づくりをする園児たち
地域のボランティアと一緒に笹団子づくりをする園児たち

「何気ないあいさつ」が地域交流の基礎に

地域住民との交流が活発になれば、職員の顔を知ってもらう機会も自然と増えてきます。そこで職員たちが大事にしているのが、「日頃のあいさつ」。
「おはようございます」「いい天気ですね」「草取りごくろうさまです」「今年は、雪が少なくていいですね」といった、他愛のない言葉のやりとりが、地域住民と心をつなげる架け橋になっているそうです。
「住民の方が『先生たちはあいさつがいいね!』とお褒めの言葉をくださることもありますね。何気ない言葉のやりとりがコミュニケーションツールとなり、地域交流の基礎につながると実感しています」(坂口さん)

騒音問題に限らず、多くのトラブルの原因は「コミュニケーションの不一致」といわれています。互いの心に壁ができてしまう前に、まずは「笑顔であいさつ」をすることが大切だと、坂口さんも感じています。
保育園と住民との間に起こる騒音トラブルは難しい問題ですが、同園の取り組みのようなシンプルな心がけが解決への糸口となるかもしれません。