多世代が集う場づくり。横浜独自の包括ケアシステムとは?
超高齢化社会を地域で支える「横浜型」地域包括ケアシステム
1991年から独自の地域包括ケアシステムを推進してきた横浜市。その拠点となっているのが、日常生活圏域である各中学校区に1カ所ずつ設けられている「横浜市地域ケアプラザ」です。
地域ケアプラザは、2000年の介護保険制度施行に先行して、地域に暮らす高齢者や障害者、子どもなど多世代を対象に、身近な福祉・保健の拠点として設置されました。地域交流の場、相談支援、高齢者介護の3つの機能が一体となっているのが大きな特徴で、2021年4月現在、横浜市内に141カ所あります。
今回は、金沢区にある六浦地域ケアプラザの活動を通じて、「横浜型地域包括ケアシステム」の魅力をご紹介します。
地域の人が気軽に来れる場を目指して
六浦地域ケアプラザでは地域福祉活動拠点として、さまざまな人に向けた多彩な取り組みが行なわれています。
高齢者向けの筋力アップ体操や健康麻雀教室をはじめ、赤ちゃんから高齢者までを対象に、地域の音楽家などに協力してもらって演奏会などを開く「むうたんカフェ」、未就園児や養育者が安心して遊べる「子育てサロンふぁんふぁん」、障害をもつ人が勉強や工作、お菓子づくりなどをして楽しく過ごす「あったかスペース」や小中学生の学習支援の場として「むうたん塾」も開かれています。
ボランティアが地域を支える
こうした活動を支えているのが、ボランティアの存在です。
超高齢化社会において、公的な支援ではフォローできない部分は、地域やボランティアの活動が必要不可欠だと内藤さんは話します。
「六浦地域は、当プラザが設立される以前から支え合いの風土が芽生えていました。元民生委員などの住民が主体となり、自主的にボランティアをコーディネートする「六浦ボランティアネットワーク」という仕組みもできています」
ボランティア活動に参加するには「六浦ボランティアネットワーク」への登録が必要です。六浦西地区にはボランティアグループが5つあり、約90人が登録。
ボランティア活動の内容は、通院等の外出の付き添いや家事全般の支援、子守り・見守りなどさまざま。
週に1回開かれる「むうたん塾」では、元教員の地域高齢者や大学生のボランティアが子どもたちの学習をサポート。むうたん塾での子どもの様子や学習面を連絡帳に記入し、保護者の方と共有しています。また、保護者の方の面談も受け付けており、子育てに不安がある母親や、発達障害のある子どもたちの心の支えになっています。
こういったボランティア活動を維持し続けるためには、日頃から人材発掘や人材育成、活動の場の提供といった多様な支援も欠かすことができません。
「公的な支援ではフォローできない部分は、地域やボランティアの活動が必要になります。「ポジティブエイジング」という高齢者が役割を持ち、地域に参加できる仕組みも求められています」(内藤さん)
コロナ禍の今だからこそできることを
六浦地域ケアプラザでも、コロナの影響によりボランティア活動の中止を余儀なくされました。
同プラザでは地域住民との交流を保つため、部屋を貸している団体の方やボランティアの方へ電話をして、近況を報告しアイデアなどを話し合いました。
地域活動・交流コーディネーターを務める山田和恵さんは、「ボランティアさんから『色々な人と会えないのが辛いけど、せめて電話でおしゃべりできることのありがたさを身にしみて感じている』という言葉が印象的でした」と当時を振り返ります。
「人が集まらなくても心がつながる。そんな催しを開けないだろうか?」
そこで山田さんが目を付けたのが、ケアプラザ正面玄関に設けられていたガラスのディスプレイコーナー。
施設内に入らずとも誰もが見れる場所に、近所の保育園児やデイサービスの利用者のぬり絵を掲示する「コロナにまけるな!ぬりえ大作戦!」は、施設の利用者はもちろん、ボランティアや地域の人々の心の支えになりました。
また、例年12月に開催していた「ふれあいバザー」に代わり、地域の人々がおうち時間で作った手づくり品を展示するイベントも開催。
「コロナ禍でもケアプラザに通ってくれるリピーターは大勢いらっしゃいます。色々な方に声をかけ、意見などを沢山もらい、精査して新しい取り組みへと発展させています」と話す山田さん。
イベントをきっかけに手づくりの面白さに目覚めた人が大勢いたため、今年7月より自主事業の手作り部を立ち上げました。
超高齢化社会を支えるためには地域住民の協力が必要不可欠です。同プラザの役割として「高齢者を支えるだけでなく、次の世代への種まきをすることが我々の使命」と語る内藤さん。六浦地域ケアプラザは、これからも地域活動や地域交流事業を通じ人と人とが出合い、協同し、互いに助け合える風土を育んでいきます。