すべての子どもたちに当たり前の生活を届けたい
2021.04.16

すべての子どもたちに家庭を。児童養護施設の小規模化

Let’s SINC

自分の家で暮らせない子どもたちが家庭に近い生活を送れるよう、地域と協力して環境を整える

児童養護施設の小規模化・地域分散化が進む

保護者のいない児童や、虐待・貧困などにより親と一緒に暮らせない「要保護児童」は全国に約45,000人います。このうち、児童養護施設などで生活する児童と、里親の家庭で養育される児童の人数比は9:1。欧米の主要国では約半数以上が里親家庭で養育されていることを考えると、日本では施設養護の割合が高いことが分かります。

子どもの成長には、親やその代わりとなる養育者と信頼関係を育む「愛着形成」が必要です。愛着は、養育者と子どもが生活を共にすることで、日常的な世話やコミュニケーションを通して形成されます。つまり、十分な愛着形成を行なうためには、より家庭に近い形での養育が必要なのです。要保護児童がより家庭に近い環境で生活できるよう、日本でも社会的養護の基盤作りが進められています。
2016年、児童福祉法が改正され「家庭養育優先原則」が示されました。児童養護施設の小規模化・地域分散化を求めるものです。
児童養護施設の小規模化には、どんな利点や課題があるのでしょうか。静岡県済生会が運営する川奈臨海学園地域小規模児童養護施設「わかな」のケースを見てみましょう。

小規模化により職員と子ども両方にメリット

「わかな」は、児童養護施設・川奈臨海学園の小規模施設として2020年4月1日に開設されました。同学園は1955年10月、虚弱児施設として開設され、1998年の児童福祉法改正で児童養護施設に移行。3~18歳までの46人の児童が43人の職員と暮らしています(2020年3月末現在)。
そんな川奈臨海学園から車で約15分の場所に開設した「わかな」へ、同施設で生活してきた6人の子どもが移り住み、当直も含めた4人の職員と共に新たな生活を始めました。
「わかな」では、一般的な家庭に近い建物の中で、小学生から高校生までの子どもたちが規則正しい生活を送っています。

「わかな」は一見すると通常の一軒家のよう
「わかな」は一見すると通常の一軒家のよう

小規模施設での生活になったことで、子どもたち一人ひとりにより職員の目が行きわたるようになり、より深い関係を築けるようになったといいます。また、以前は集団調理で給食のようだった食事が、より家庭に近い食事となり、子どもたちの意見も反映されやすくなりました。
子どもたちにとっても良い影響がありました。少人数で刺激が少ないため落ち着いて生活が送れるようになり、子ども同士の親密度も上がりました。

ただ、「わかな」のような小規模施設の開設には、物件探しの課題が伴います。国の基準では、部屋数、1人当たりの居室面積のほか、居間、食堂など子どもたちの交流する場所を有することなどの条件があり、「わかな」でも基準を満たす物件探しに難航しました。

大型施設での集団生活から地域に育てられる家庭生活へ

そんな「わかな」を支えているのは、地域の人々です。物件探しの際も、2年間かけて行政や地域との協議を重ね、事業に協力してくれる家主を見つけることができました。
「わかな」の開所式には、地域の人々も来賓として招かれました。地域の人々は、畑で採れた野菜をおすそ分けしてくれたり、行事や散策に誘ってくれたりと、子どもたちのことをいつも気にかけてくれています。

多数の関係者が招かれた開所式の様子
多数の関係者が招かれた開所式の様子

地域で清掃がある際は子どもたちも参加するなど、交流は継続的に行なわれています。
家庭に近い環境で、地域の人々に見守られながら生活する。「わかな」のような環境づくりは、すべての子どもたちが伸び伸びと成長できる未来への第一歩かもしれません。