地域の支援者と里親家庭
をつなぐ交流会を実施!

大阪乳児院が地域と共に取り組む
里親家庭を孤立させない「チーム養育」とは?

大阪 済生会大阪乳児院
Let’s SINC
里親が支援者や他の里親家庭と悩みを共有できる場所をつくり、地域全体で子どもを育てる
近年、国や自治体において、乳児院や児童養護施設で生活する子どもたちの「家庭養育」を推進する動きが加速しており、里親制度の重要性はますます高まっています。しかしその一方で、養育の喜びの裏に隠れた「不安や悩みを一人で抱え込んでしまう」という里親の孤立が、社会的な課題となっています。里親家庭を社会から孤立させず、地域全体で包摂(インクルージョン)していくためには何が必要なのでしょうか。その一つの答えが、多様な人々が連携して子どもの育ちを支える「チーム養育」です。今回は、地域における里親支援の拠点として活動する大阪乳児院の「里親支援センターおむすび」が開催した、初の交流会の様子をレポートします。

国が推進する「家庭養育」と、大阪乳児院の役割

日本では長らく、事情があって実親と暮らせない子どもたちを乳児院児童養護施設などで育てる「施設養育」の割合が高い傾向にありました。しかし、2016年の児童福祉法改正などを機に、子どもが信頼できる特定の大人と継続的な愛着関係を築きながら育つ「家庭養育(里親特別養子縁組など)」を原則とする方針が打ち出され、現在、国を挙げて里親委託率を引き上げる動きが進められています。

そうしたなか、何らかの理由で家庭で育てられない乳幼児を養育してきた「済生会大阪乳児院」は、施設内での養育にとどまらず、その専門性を生かした地域支援へと機能の幅を広げています。現在では、在宅での子育て支援や、地域の里親を支える大きな拠点としての役割を担っているのです。

大阪駅周辺における戦争孤児等を保護することを目的に、1949年に開所された大阪乳児院。事情により家庭における養育が困難な0歳から概ね2歳まで、60人の子どもたちが生活している

里親が直面する「見えない孤立」

「養育の判断に迷うことがある」「気軽に相談できるつながりがほしい」──。日々、里親家庭への支援を行なうなかで、現場のスタッフたちはそんな切実な声を何度も耳にしてきました。

国の方針によって里親制度が推進される一方で、実際の養育では、子どもとの関わり方や日々の対応に悩んだとき、相談できる相手が身近におらず、不安や迷いを一人で抱えてしまう里親も少なくありません。他の里親がどのように工夫しているのかを知りたい、安心して悩みを共有できる場がほしいという声も多く寄せられていました。

こうした背景から、2025年4月に開設されたのが「里親支援センターおむすび(第二種社会福祉事業)」です。開設から2年目を迎えた現在、同センターでは里親制度の啓発や訪問支援だけでなく、地域全体で里親家庭を支える体制づくりに力を注いでいます。

2025年に済生会大阪乳児院内に開設された「里親支援センターおむすび」。センター長に就任したのは、大阪乳児院で保育士として子どもたちの生活を支える一方、約8年間、里親支援専門相談員として里親家庭と子どもたちをつなぐ役割を担ってきた大句一恵さん

枠を超えてつながる。初の里親交流会

子どもの養育を里親家庭の中だけで抱え込むのではなく、地域や関係機関、そして里親同士がゆるやかにつながり合い、社会全体で支えていく。そんな「チーム養育」の考え方を形にするため、2026年2月、吹田子ども家庭センター管轄内(吹田市・摂津市・茨木市・高槻市・島本町)では初となる「はぐくみホーム(養育里親)」交流会が開催されました。

この交流会の大きな特徴は、支援機関の枠を超えたことです。里親家庭だけでなく、管轄内の児童養護施設の里親支援専門相談員や、地域の児童相談窓口となる子ども家庭センターの里親担当ケースワーカーなど、多様な専門職にも参加を呼び掛けました。里親同士が体験を語り合って安心感を得るだけでなく、いざという時に頼れる支援者や行政と「顔の見える関係」を築くことが、チーム養育の第一歩となるからです。

「防災」をテーマに、自然な会話と安心感が生まれる

当日は里親家庭5世帯(計7人)が参加し、すべての参加者が身近に感じられる話題として「地域や自宅での防災」をテーマに会が進められました。

第1部では、子育て世代と防災をつなぐ活動をしている一般社団法人「あおぞら湯」の方々を講師に迎えた防災教室を実施。防災絵本の読み聞かせや、防災トイレの模擬体験など、子どもの視点を大切にした参加型のプログラムが行なわれました。

防災トイレ体験では、実際に触れて試すことで、災害時の備えを身近に感じる様子が見られました。子どもたちは遊び感覚で楽しみながら取り組み、「こうするんだよ」と得意げに話す姿も見られました。そんな子どもたちの様子を里親さんが笑顔で見守る場面もあり、楽しみながら防災への理解を深める時間となりました。

防災教室では里子も参加して簡易用トイレを作って使用した

続く第2部の交流会では、地域の防災ハンドブックを活用し、災害時の連絡体制の確認や災害カードの作成を行ないました。初対面の参加者同士でしたが、「防災」という共通のテーマがあったことで自然と会話が弾みます。家庭での備えの工夫や災害時に子どもが安心して過ごせるための準備など、日常の対応の工夫や養育の悩みについても、和やかな雰囲気のなかで情報交換が行なわれました。

施設の専門相談員や地域のケースワーカーなど、多様な支援者との交流も。平時から「顔の見える関係」を築いておくことで、いざという時にためらわず相談できる安心感が生まれる

「つながり」が養育の力になる

交流会を終えて、参加した里親のAさんからはこんな声が寄せられました。
「同じ立場の方と話ができて安心しました。普段は一人で悩むこともありますが、いろいろな工夫を聞くことができて参考になりました」

大阪乳児院 里親支援センターおむすびのセンター長を務める大句一恵さんは、今回の取り組みをこう振り返ります。
「里親同士のつながりから生まれる安心感や、地域の支援者とつながることが、日々の養育の大きな力になることを改めて実感しました」

社会全体で子どもを育む「チーム養育」は、まだ始まったばかりです。センターでは今後もこうした機会を継続的に設け、里親家庭が安心して子どもを育てられる地域づくりに取り組んでいきます。

 

(機関誌「済生」2026年6月号 「交差点」より)

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