2026.08.03

よくわかる!「介護保険」――知っておきたいお金とサービスの基礎知識

40歳から保険料の支払いがスタートする「介護保険」。少子高齢化が加速する日本において、介護はどの世代にとっても決して他人事ではありません。本記事では、介護保険誕生の歴史的背景から、保険料や利用手続きの仕組み、さらには、深刻な人手不足やヤングケアラーなど、制度が直面する「今」の社会課題までを客観的に深掘りします。いざという時に慌てず、適切な介護サービスを活用するための基礎知識を身につけましょう!

炭谷 茂[監修]

1.【成り立ち】“保険”が生まれる前の介護問題とは?

介護保険とは、社会全体で介護を支えることを目的に創設された社会保険制度です。介護を必要とする高齢者等が介護サービスを利用した場合、介護保険に加入していることで、かかった費用の7〜9割を保険で賄うことができます。2024年度時点で、約675万人が介護サービスを利用する超高齢社会の日本。そんなこの国の介護保険制度は、2000年4月の介護保険法施行とともにスタートしました。

この制度ができる前の日本では、高齢者の介護は「家族、とりわけ女性が担うもの」という意識が強くありました。また、実施施設も少なかった公営の介護サービスも、国や市町村がサービスの内容を割り当てる「措置制度」であり、その対象も主に身寄りのない方や低所得者に限られていたのです。

しかし、高齢化や核家族化、産業構造の変化による都市部への人口集中などの影響により、家族だけで介護を担うことはだんだんと難しくなっていきました。そこで、介護を家族だけが担うものとせず、社会全体で支えあう仕組み(介護の社会化)を構築するため、介護保険制度の原型が形づくられました。その特徴は、ドイツやオランダの制度を参考に、「利用者が自らサービスを選べる契約制度」として設計されたこと。これにより、利用者は自身の生活に本当に必要なケアを、自分自身で選択して利用できる契約制度に基づいた介護保険が日本に根付いていきました。この流れは、1997年から行なわれた社会福祉基礎構造改革の方向性と一致するものです。

2.【保険料】いつから? いくら払う?

日本国内に居住する40歳以上の人は、介護保険制度の被保険者となり、原則として毎月保険料を負担することになります。

済生会公式キャラクター
さいせい

こんにちは。済生会公式キャラクターのさいせいです ! ところで、「まだまだ健康なのに、なぜ40歳から?」と疑問に思わない? 実はそれには、大きく2つの理由があるよ。

1つ目は、自分自身が加齢による病気にかかりやすくなるから。40歳を境にさまざまな病気のリスクが高まって、将来的に介護が必要になる可能性がグッと上がるんだよ。2つ目は、自分の親が高齢になって介護が必要になる可能性が高まる年代だから。

介護保険は、サービスなどの恩恵を受ける人が保険料を支払って支え合う「社会保険」の仕組み(受益者負担)で成り立っているよ。親の介護を家族だけで抱え込まず、社会全体で支え合うことで、結果的に自分自身の負担も軽くなるよね。この「みんなで助け合う(共同連帯)」という考え方から、介護が身近になる40歳が、介護保険に加入して保険料を納めるスタートラインとして設定されているんだ。

支払う保険料の金額は、在住地の市区町村ごとで地域の実情に合わせて異なる金額が定められていますが、全国の自治体の平均金額は年々増大しています。介護保険が始まった2000年度時点では、65歳以上の保険料(全国平均)は2,911円/月でしたが、2024〜2026年度には6,225円/月にまで上昇しています。

この根本的な要因には、少子高齢化があげられます。介護保険制度を支える財源は、40歳以上が支払う「保険料」と、国や自治体の「公費(税金)」で半分ずつ賄われています。しかし、高齢化の急速な進行によって増え続ける介護需要に対し、少子化によって保険料や税金を負担する現役世代は減少しています。つまり「介護に必要なお金は増えるのに、それを負担する人口は減る」という課題が浮き彫りになっているのです。

財源の限界などの理由から、介護保険では発足以来、給付の見直しが行なわれており、本来介護保険が想定していたサービスが十分に提供されにくくなる恐れがあります。

2005年には要介護認定の厳格化、2006年に施設入居者の居住費・食費・人件費の自己負担増、また2015年には高所得者の負担割合が2割に引き上げられたのち、2018年に現役並み所得者の負担率が3割に上がりました。

安定的かつ公平な介護サービスを実現するには、制度の財政基盤を強化し、給付と負担のバランスをどのように考えるかが重要です。

出典:「高齢社会白書」(内閣府)および「介護保険事業状況報告」(厚生労働省)をもとに作成

3. 【利用】サービスはいつから受けられる?必要な手続きは?

介護保険を利用するときの条件は、年齢で変わります。40歳〜64歳は「第2号被保険者」に分類され、関節リウマチや脳血管疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの「特定疾病(16種類)」の影響で、介護が必要になった場合にのみ、要介護認定を受け、介護サービスを利用することができます。

一方、65歳以上になると「第1号被保険者」に分類され、特定の疾病などの原因にかかわらず、介護が必要と認定された全員がサービスを利用することができます。その際、利用者がどの程度の介護を必要としているかを示す指標が「要介護認定」です。全7段階の区分によって、それぞれ利用できるサービスの範囲や支給限度額が決められています。

要介護認定の区分と利用できるサービス

必要とする介護度合 区分 区分の説明 利用できるサービス
要介護5 意思伝達が困難で、生活全般に全面的な介助が必要

・寝たきりに近い状態・食事、排泄、入浴などほぼ全場面で全面介助が必要

介護保険のサービス
要介護4 生活全般に全面的な介助が必要で、一人での生活が著しく困難

・自力での立ち上がりや歩行ができない
・排泄や入浴などで全面介助が必要
・問題行動がみられることがある

要介護3 日常生活全般において自力でできないことが多く、全面的な介助が必要

・立ち上がりや歩行が自力でできないことがある
・排泄や入浴などで全面介助が必要

要介護2 食事や排泄など、生活の基本的な動作に部分的な介助が必要

・立ち上がりや歩行に何らかの支えが必要
・複雑な生活動作の理解が低下していることがある

要介護1 基本動作は概ね一人でできるが、部分的な介助や見守りが必要

・立ち上がりや歩行に不安定さがある
・複雑な生活動作に何らかの支援が必要

要支援2 基本的な生活は自立しているが、手段的動作(買い物など)に支援が必要

・要支援1より機能が低下している
・身の回りの世話の一部に支援が必要

介護保険の介護予防サービス
要支援1 基本的な生活は自立しているが、要介護状態を防ぐための支援が必要

・立ち上がりや歩行は概ね自立している
・日常生活の一部に見守りや支援が必要

非該当 日常生活を自分で行なえると考えられる状態 市区町村が行なう地域支援事業

では、実際に「介護が必要かも?」と思ったとき、どのような手続きが必要なのでしょうか。図をもとに見ていきましょう。

 

相談・申請

1. まずはお近くの窓口で、相談・申請を

市区町村の介護保険課や、地域の高齢者の総合相談窓口である「地域包括支援センター」に相談し、「要介護認定」の申請を行ないます。なお、申請は本人のほか、家族や地域包括支援センターによる代行も可能です。

【Point!①】これを用意しよう!
申請時には、「介護保険被保険者証(65歳以上の方)」または「医療保険証(64歳以下の方)」や、「主治医(かかりつけ医)の氏名・病院名がわかるもの」が必要になります。

認定調査

2. 自宅への訪問調査と、かかりつけ医の意見書

市区町村から委託された調査員(ケアマネジャーなど)が自宅を訪問し、本人の心身の状況や日々の生活の様子を確認する「認定調査」を行ないます。同時に、市区町村からの依頼により、かかりつけ医が「主治医意見書」を作成します。最後にかかりつけ医を受診した日から、期間が空いている場合は、新たに受診が必要です。

【Point!②】訪問調査はありのままの姿で!
訪問調査の際、本人が「普段よりもしっかりしているように見せよう」と無理をしてがんばってしまうことがよくあります。意識して普段と違う振る舞いをしてしまうと、適切な認定結果が得られない場合がありますので、調査を受けるときは、ありのままの状態を調査員にみてもらうことが大切です。

介護認定

3. 審査会が7段階で、必要な介護レベルを審査・認定

調査結果に基づくコンピュータの一次判定と、医療・福祉の専門家による「介護認定審査会」の二次判定を経て、自宅に結果が通知されます。

【Point!③】今すぐ介護が必要な場合は?
申請から認定結果が届くまでは、原則として30日以内とされています。ただし、結果が出る前であっても、緊急性が高い場合は「暫定ケアプラン」を作って、前倒しでサービスを利用し始めることも可能です。不安な方は、申請時に相談してみましょう。

ケアプラン

4. ケアプランを作成し、サービス開始へ

判定された区分に合わせて、ケアマネジャー(介護支援専門員)などに相談し、本人・家族の希望を聞きながら「ケアプラン(サービス計画書)」を作成してもらいます。プランが決定したら、各サービス事業者と契約を交わし、いよいよ利用スタートです。

【Point!④】ケアプラン作成後に必要なサービスが変わったら
ケアプランは、状況の変化や課題などがあれば適宜変更が可能です。更新時などにケアマネジャーに伝えてください。

 

「介護サービス」の種類と主な内容

また、ケアプラン作成時に選択することのできる「介護サービス」は非常に多岐にわたります。

(1) 自宅で受けるサービス(居宅サービス)

・訪問介護(ホームヘルプ):介護福祉士などのホームヘルパーが自宅に来て、食事や入浴の介助、家事援助を行なう
訪問看護:担当医の指示のもと、看護師が自宅などを訪問し、療養上の世話や診療の補助を行なう
福祉用具貸与:車いすや特殊寝台などを原則、費用の1〜3割の自己負担でレンタルできる
・住宅改修:手すりの取り付けや段差の解消などを費用の1~3割の自己負担でリフォームできる(支給上限20万円)

(2) 通って受けるサービス(通所サービス)

通所介護(デイサービス):介護施設などに通い、食事・入浴・レクリエーション等を受けるサービス
通所リハビリテーション(デイケア):医療施設に通い、リハビリを受けるサービス

(3) 施設に入居するサービス(入所サービス)

・特別養護老人ホーム(特養):要介護高齢者のための生活施設。原則要介護3以上の方が入所可能
・介護老人保健施設(老健):リハビリなどを通して在宅復帰・在宅支援を目指す施設
介護医療院:要介護高齢者の長期療養・生活のための施設

4.【費用】介護サービスの自己負担割合と費用の目安

実際に介護サービスを利用する際には、いくらくらいかかるのでしょうか。

冒頭で述べたように、介護サービスを利用した際の自己負担額は原則1割です。ただし、一定以上の所得がある場合は、2割または3割の負担となる場合があります。また、要介護認定の区分や利用するサービスの種類、その利用頻度によっても、支払う金額は変わってきます。

さいせい:実際にどのくらいかかるんだろう? 一緒に考えてみよう!

例えば、1割負担の人が、「要介護4」と認定されて、特別養護老人ホームに入居した場合、1カ月の「介護サービス費」は全国平均で約295,170円なので、自身の負担額の目安は約29,517円。これに加えて、施設での「食費」や「居住費」などが加算されて、実際の月額負担は、居室タイプや所得区分によっても差があるんだけど、一般的には月10〜15万円程度となるケースが多いみたい。

一方で、同じく1割負担の人が「要介護2」で、近所の福祉施設で受けられる「通所介護(デイサービス)」を週3回利用した場合はどうだろう? この時の1カ月の「介護サービス費」は全国平均で約100,440円ほど……。なので、自己負担額の目安は約10,044円になるね。こちらも、さらに、昼食やおやつなど、施設での食事や、入浴等のサービスを追加すると、併せて月2~4万円になるケースが多いと言われているよ。

このように、必要となる費用は人によって大きく異なるため、自身の状況をしっかりとケアマネジャーと共有し適切な「ケアプラン」を作成することが大切です。

さらに気をつけたいポイントとして、介護保険では要介護度ごとに「区分支給限度基準額」と呼ばれる利用上限額が定められています。この上限額の範囲を超えてサービスを利用した分については、全額が自己負担となってしまうため注意が必要です。

5.【社会課題】制度が抱える「今」の課題

超高齢社会において大切な役割を担う介護保険制度ですが、制度開始から四半世紀が経ち、当初の想定を超えた様々な課題が浮き彫りになっています。

(1)  人手不足と「2040年問題

介護現場の人手不足は深刻です。2040年度には65歳以上の高齢者が全人口の約35%に達する一方で、2024年7月の厚生労働省の調査では、2040年度には約57万人の介護職員が不足すると推計されています。

この主な要因としては、少子高齢化によって介護を必要とする人が増える一方で、担い手となる現役世代が減少していることが挙げられます。加えて、生活介助に伴う身体的な負担があることや、一人ひとりに合わせた支援、さらには医療的ケアなど、介護現場に求められる役割が広がっていることも影響しています。その結果、2025年3月の介護職の有効求人倍率は3.97倍と、全職業の1.16倍に比べて非常に高い水準となっています。

さいせい:こうした課題に対応するため、いま、全国のいろいろな施設や法人では「職員が安心して働き続けられる環境づくり」が積極的に進められているよ。例えば、介護ロボットや見守りセンサーを活用して、身体的な負担軽減を目指したり、記録のデジタル化によって事務作業の効率化といったテクノロジーの導入が進められているんだ! 他にも、研修や資格取得支援を通じた未来の人材育成や、多職種で協力し合う体制づくり、外国人介護人材の受け入れ――多様な人材が無理なく長く働き続けられる、“持続可能な介護現場”の模索が続いているよ!

(2)  介護を担う「家族」のかたちの変化

介護保険制度が始まって以来、介護施設やサービスの量は年々増えていますが、依然として“介護者としての家族”の存在は大切です。しかし、介護保険制度が始まった当時と比べ、現在の家族の状況は複雑に変化しており、生じる問題もより複雑になっています。

例えば、高齢者が高齢者を介護する「老老介護」。要介護者と同居する主な介護者の組み合わせを見ると、「65歳以上同士」が63.5%、「75歳以上同士」でも35.7%に達しています。

また、「ビジネスケアラー(仕事をしながら介護する人)」や、「介護離職」の増加により、介護のために本来できるはずの仕事ができなくなることで社会や家庭に与える経済的損失への危惧も高まっています。

さらには、80代の高齢の親が、無職や引きこもり状態にある50代の子どもの生活を支え、経済的・社会的に孤立してしまう社会問題「8050問題(9060問題)」や、家族の介護や世話を日常的に行なっている子どもたち「ヤングケアラー」にかかわる問題、出産年齢の高齢化を背景に自身の育児と親の介護の時期が重なってしまう「ダブルケア」など、課題は山積しています。社会構造の変化に伴い、旧来の介護保険制度では対応しきれなくなりつつある現状については、引き続き多方面で議論が続けられています。

さいせい:他にも、近年問題になっているのが、介護者の“介護疲れ”。その解決策として、「レスパイトケア」という考え方が注目を集めているんだけど、みんな、知ってるかな?

「レスパイト」は、英語で休息・リフレッシュを指す言葉で、「レスパイトケア」とは、日々の疲れや冠婚葬祭、出張、旅行などの理由で在宅介護が難しい場合に、一定の期間、医療機関や福祉施設などがその代わりを担う取り組みなんだ。介護者のリフレッシュや負担軽減を図ることで、介護疲れなどから起こる虐待やネグレクトを防止するという観点からも注目されているよ! 具体的な支援を制度化している行政もあるみたいだから、調べてみるといいかもね~

6.【まとめ】今のうちから備えよう!

介護保険制度は、高齢者等の暮らしと介護を支え、本人や家族が地域で自分らしい生活を続けられるようにするための社会保険制度です。そして、介護保険制度は、従来、家庭の中で行なわれてきた介護を社会全体で担う「介護の社会化」を支える一つの方策となっています。仕組みを正しく理解し、専門機関のサポートを適切に活用すれば、自分らしい生活を長く続けることができます。自分が介護を受ける場合には、適切なサポートが得られ、身近な人の介護が必要になった時も、仕事などとの両立の助けになります。

将来の不安に備えるためにも、まずは今のうちから地域の介護サービスや、勤務先の介護支援制度を確認してみてはいかがでしょうか。

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