から広がる地域住民の輪


農園でまちづくり。
小樽を誰もが「活躍できる場」に
100年暮らしたいまちづくり、北海道済生会の取り組み
小樽運河などで知られる観光都市・北海道小樽市。
この小樽市にある北海道済生会は、小樽市などの行政や地元企業などと連携しながら地域の誰もが健康に暮らせるウエルネスなまちづくりに取り組んでいます。「小樽病院」をはじめ、「小樽市南部地域包括支援センター」「小樽老人保健施設 はまなす」「重症心身障がい児(者)施設 みどりの里」「発達支援事業所 きっずてらす」「就労支援事業所 ぷりもぱっそ」などを管轄しており、子どもから高齢者、障害を持つ方など小樽に住むさまざまな人へ医療福祉サービスを提供しています。
また、北海道済生会が大型複合商業施設の「ウイングベイ小樽」にて運営する健康福祉ゾーン「済生会ビレッジ」では、2024年9月市内外から7000人が参加したまちづくりイベント「小樽くらしたい共生フェス2024」を企画。高校生などの若い世代が未来のまちづくりについて自分のアイデアやプロジェクトをプレゼンテーションでアピールする「未来共創ドラフト会議」やパラアスリートによるトークショー、地元の企業らによる「キッチンカーフェス」、地域のボランティア団体が行なう「介護予防体操」などが催され、地域に住むさまざまな人がつながり、誰もが暮らしたい“まちづくり”について、一緒に考えるきっかけとなりました。
誰もが健康に生き生きと暮らし、このまちに住み続けたいと思ってほしい――「共生フェス」などさまざまなまちづくり事業を通して小樽の人と人とのつながりがあちこちで生まれていくなか、「ウエルネスなまちづくり」の一環として北海道済生会が次に目指したのが、地域の誰もが「活躍できる場」をつくることでした。
「活躍の場」創出のための農場「そらし~ど」
そのための取り組みとして、北海道済生会の櫛引久丸常務理事の発案をきっかけに、2023年から小樽市塩谷・桃内地区や小樽市築港地区にある済生会施設の敷地内計4カ所に、住民参加型の農園「済生会ファーム」を開設。
生産した作物を地域で販売することで、参加する地域の方々と野菜を販売する企業とのつながりを生み出したり、就労継続支援事業所ぷりもぱっその利用者さんが収穫物の加工や販売を担当するなど、「社会的マイノリティの方々への就労支援」も一つのテーマに掲げ、インクルーシブな農園を目指しました。
農園の維持管理費用や、商業施設内で生産物の加工を行なう改修費などを募るため、2023年6月にクラウドファンディングにも挑戦。約2カ月で約300人から目標額1100万円を超える1324万4420円の支援金が集まりました。

クラウドファンディングと並行して、塩谷地区にある老健はまなすでは5月ごろから敷地内で農園開墾・栽培作業を開始。慣れない作業に手こずりながらも職員が農地を少しずつ開墾していきました。2023年6月には、職員から農園の名称を募集。空に向かって作物が元気に種から成長するようにとの思いと音階になぞらえて「そらし~ど」と名付けられました。
重症心身障がい児(者)施設 みどりの里でも農園活動が活発化。入所者さんが職員と一緒にキュウリやピーマンなどを育て、収穫、そしてみんなで一緒に食べることで、普段の食事への関心をもってもらうなど「食育」につなげることも狙いの一つです。

同時期には、社会貢献型販売店「ぷりもショップ」が、商業施設ウイングベイ小樽内でスタート。就労支援事業所「ぷりもぱっそ」が主体となり、障害者の方々を中心に店舗運営を行なっています。2024年は「そらし~ど」からブルーベリー80パック(約8キロ)が入荷し、ぷりもショップを通して販売されました。今回のプロジェクトテーマの一つである「社会的マイノリティの方々への就労支援」を達成するため、今後も「そらし~ど」で採れた作物をたくさん取り扱っていく予定です。

さらなる発展を見据えてプロジェクトチームを発足
2年目となる2024年は、ウイングベイ内に開設した発達支援事業所「きっずてらす」、そして小樽病院を加えた4施設の敷地内で新たに農園を開墾。施設間の連携を目的に、各施設の代表者が集まり「農園プロジェクトチーム」が発足しました。
月に一度、プロジェクトチームで集まり各施設の状況を確認、生育状況などを意見交換を行なっています。農園名も前年からはまなすで使用している「そらし~ど」を統一名称として使用していくこととなりました。
2024年からプロジェクトチームに加わった小樽病院は枝豆やキュウリ、ジャガイモなどを栽培し、院内保育所やきっずてらす、保育園留学の子どもたちが収穫を手伝いました。きっずてらすではミニトマト栽培に挑戦。完全に熟す前に落ちてしまうこともありましたが、施設内で食べる分の収穫に成功し、子どもたちは美味しそうに採れたての新鮮野菜を頬張りました。
また、老健はまなすでは今後の食品加工を視野に入れ、収穫物で「ブルーベリージャム」「大葉のジェノベーゼ風ソース」「セミドライトマトのオイル漬け」を試作。他にも、ミニトマトや施設内にもともとあった梅を収穫し、ジャムに。はまなすの利用者の方たちからは大好評だったといいます。

今後の展望は、「そらし~ど」ブランドの確立?
2024年を振り返る農園プロジェクトチームの会議では、「今年は試行錯誤をしながらの運営となり、プロジェクト会議が10月2日に行なわれ動き出しが遅かったこと」「種芋の手配に苦労したこと」などの課題が共有されました。2025年からは2月に第1回の会議を行ない、農作物の年間スケジュールを検討することが決まりました。同時に、2024年の経験をもとに、より多くの収穫ができるような、少しでも多くの職員や地域の方々に関わってもらえるような施策を考えていくそうです。
2025年は、農園で収穫した作物を、「ぷりもぱっそ」の就労支援の一環でウイングベイ小樽内に2024年完成したクックルーム(加工調理施設)にて、ジャム等に加工し「そらし~どブランド」として販売していくことを目標に掲げています。「そらし~ど」のさらなる成長に注目が集まります。
